弁護団挨拶

 神奈川過労死対策弁護団は、過労死あるいは過労疾病の犠牲になった方の被害の回復、そしてその悲劇を引き起こした企業等の責任を明らかにし再発防止につなげるため努力をしようとする神奈川県内の弁護士による任意の集まりです。

 私たちは、全国各地の過労死に関する弁護団が参加している過労死弁護団全国連絡会議に加わり、過労死110番などの取組みを通して実際に被害を受けた方の相談に乗ったり、労災保険の申請や訴訟において弁護士として関与したりするほかに、学校での過労死問題の講演、厚生労働省主催のシンポジウムへの協力なども行っています。

 過労死という言葉が社会に使われるようになったのは1982年と言われています。当時は労災,つまり仕事によって亡くなったと認定されるのはごくわずかでした。そのような中で、過労死は重大な人権侵害であり何か対策をしなければならないという観点から,1988年、過労死110番が発足しました。

 そこに寄せられた遺族の方々の痛ましく,切実な声は、大きな力を持つものでした。

 遺族の方たちは家族の会をつくり、「なぜ、愛する夫、妻、娘、息子は、死ぬまで働かなければならなかったのか、なぜ未然に防ぐことはできなかったのか、なぜ仕事のために倒れたという現実を企業も行政も認めてはくれないのか」と問いました。

 その声をマスコミが取り上げ、裁判が起こされ、裁判官に、世論を背景に事実を明らかにしていく中で、判決で突破口が開かれ、それが労災の認定基準を変えて行きました。

 過労死をなくすため立ち上がった家族の会の人々やその支援者の方々は、過労死防止の法制定を求めました。その努力が実り,超党派で過労死等対策防止推進法(過労死防止法)が可決され、2014年11月1日施行されました

 しかし、過労死防止法の施行後も、いたましい過労死や過労自死事件が起き続けています。

   企業の立場からみても、社員を失うことは損失です。健康を無視した働かせ方は、過労死や過労疾病に至らなくても、社員を疲弊させたり、精神的な不安定さをもたらしたり、職場のパワハラの要因になったり、家庭を壊したり、生産性を引き下げたりといった結果につながります。働きがいのある職場、明るい職場、働きやすい職場こそが、ひとり一人の能力が発揮され企業が発展する基盤になるものです。

  私たちは、大切な健康、命、幸せを守るため過労死等をなくそうとする人々と協力しながら、被害を受けた人たちに寄り添いできるだけの被害の回復を図り、さらなる悲劇が起きないように努力していきます。

神奈川過労死対策弁護団 代表幹事 弁護士 野村和造